先日(6月1日)の日本経済新聞の記事「ドイツ悩ます病欠 コロナ後も増え年24.9日、生産性に影」
ドイツでは従業員の場合、医者にArbeitsunfähigkeitsbescheinigung(略してAU Bescheinigung)をもらえれば病気で欠勤しても給料が支払われます。
その上、有給休暇の日数にはカウントされないので、有給は減りません。
しかも有給休暇中に病気になった場合でも病欠届けを出せばその日数分有給休暇とは別に有給を取ることができる場合があります。
被雇用者にはありがたいシステムです。が…
病気で欠勤する人が増加の一途を辿る
病気で欠勤する人が激増しています。
先に紹介した日本経済新聞の記事にグラフがありますが、ドイツの経済情報サイト(こちら)によると
病気による欠勤日数は1人当たり1年間で
- 2010年=9.4日
- 2023年=19.4日
と激増しています。
おかげであらゆるところで人手不足。
医者に診てもらいたくて診療所に電話をしても「留守電」(受付に人がいない)、電車は運転手が病欠で突然キャンセルされる、飛行機だって飛ばなくなる。

DBドイツ鉄道やルフトハンザのキャンセル率はかなり高くて、ドイツで生活しているととても不便です
会社に行けば誰かが病欠でその分、出勤している人の仕事が増える。
楽をしたい人と簡単に出る病欠届
ドイツの人々も勤勉ではなくなった、と言われますが、1つはこの簡単に出る病欠届にも原因があると思います。
先日、解雇が決まった同僚がその後は有給と病欠で全く仕事をせずに5週間分給料だけはもらった話を書きました。
私の職場は従業員数が少ないところで、女性ばかり。もともとキャリア志向ではない人ばかりなので、簡単に病欠をとって欠勤します。

どうみても彼女は病気ではなかった。でも診療所によったら「病欠届」は簡単に出るのです。
ちょっとお腹が痛い、とでも言ってホームドクターのところに行けばよいだけ。冬なら「風邪引いたかも?」とホームドクターに電話すればいいだけ。
ドイツの経済が停滞するのは目にみえていたし、健康保険料も値上げ
病欠を提出しても給料がもらえる、ということは、雇用側と健康保険会社がその分を負担しています。
これだけ病欠が増えると経済が停滞するのはもちろんです。
レガシーキャリアの航空会社のフライトが人手不足でドタキャンとは酷い状態ですよね。ドイツ鉄道も「運転手がいないためキャンセル」というケースが頻繁に発生して一般人は大迷惑。
道路工事などはいつ終わるのか全くわかりません。橋など修理が必要な箇所がたくさんあるというのに。
病欠が増えると健康保険会社の負担が大きくなり、ひいては保険料が値上がりするのはやむをえないことです。
(実際、今年から保険料は値上がりした)
保険料が上がると手取りが減り、手取りが減ると賃金の値上げ要求をしてストをする。そしてまた経済が停滞して雇用主は給料を払えなくなり、賃金を上げることができなくなる…
ドイツ経済はどこまで低下するのか?
ちょっとドイツ語
Arbeitsunfähigkeitsbescheinigung
- die Arbeit=仕事
- unfähig=不可能な
- die Unfähigkeit=不可能、無能
- die Bescheinigung=証明、証明書
上の写真は私が2022年に骨折をして仕事に行けなくなった時にもらった証明書です。(って、内容はもちろん隠している)
実は今年も立てないほどの腰の激痛で10日ほど欠勤。
いざという時はありがたいけれど、このシステムを悪用する人が多いのには辟易します。

にほんブログ村
コメント